粟津にとゞまりて、十二月(しはすの)二日京に入る。くらく〔夜に入りて〕往き著くべしと、申の時ばかりに立ちて行(ゆ)けば、關〔逢坂關〕ちかくなりて、山づらにかりそめなるきりかけ〔板塀に似たるもの〕といふ物したる上(かみ)より、丈六の佛〔一丈六尺の佛像〕のいまだ荒作(あらづくり)におはするが、顔ばかり見やられたり。あはれに人ばなれて、何處(いづこ)ともなくておはする佛かな、と打見やりて過ぎぬ。こゝらの〔數多の〕國々を過ぎぬるに、駿河の清見が關と、逢坂關とばかりはなかりけり〔風景のよきは〕。いと暗くなりて、三條宮原子内親王〕の西なる所につきぬ。



