更級日記 - 36 十二月二十五日

十二月(しはす)二十五日、宮の御佛名(みぶつみゃう)に召しあれば、その夜ばかりと思ひて參りぬ。しろき衣どもに、濃き掻練を皆著て、四十餘人ばかり出で居たり。しるべし出でし人の、かげに隱れて、あるが中に、うちほのめいて、曉にはまかづ。雪うち散りて、いみじく烈しく冴えこほる曉方の月のほのかに、濃き掻練の袖にうつれるも、實(げ)にぬるゝがほなり。道すがら、
年はくれ夜はあけがたの月かげの袖にうつれるほどぞはかなき

更級日記 - 37 かう立ち出でぬとならば