更級日記 - 18 五月朔日ごろ

五月(さつき)朔日ごろ、つま〔軒の〕ちかき花橘の、いと白く散りたるをながめて、
時ならず降る雪かとぞながめまし花たちばなのかをらざりせば
足柄といひし山の麓に、闇(くら)がり渡りたりし木の樣(やう)に茂れる所なれば、十月(かみなづき)ばかりの紅葉、四方の山邊よりも、實にいみじくおもしろく、錦をひける樣なるに、外(ほか)よりきたる人の、「今まゐりつる道に、紅葉のいとおもしろき所のありつる」といふに、ふと、
いづこにもおとらじものを我宿の世をあきはつる氣色ばかりは〔續千載集に入る〕

更級日記 - 19 物語のことを